東京オリンピックと不動産
2020/02/14
いよいよ2020年、東京オリンピックが開催される年になりましたね。この東京オリンピックが経済に、そして不動産投資にどのような影響を与えると考えられるのでしょうか。
2020年のオリンピックの経済効果を、1964年に開催された前回の東京オリンピックとの対比において考えてみたいと思います。
1964年の東京オリンピック開催前は!?
前回、東京でオリンピックが開催されたのは、1964年。今から56年も前なのでも経験のない人も多いかもしれませんね。この時、日本はちょうど高度経済成長期の真っ只中であり、日本経済は大きく成長していましたが、その勢いをさらに後押しするように、東京オリンピックに合わせて行われたインフラ整備は日本に大きな経済効果をもたらしました。
主なインフラ整備として、首都高速道路、東海道新幹線や東京モノレール、地下鉄日比谷線、そのほか建造物としては国立競技場、代々木体育館などが挙げられます。
この影響で、1960年から1964年にかけて物価上昇率を排除した実質GNPは平均で11%の成長が見られたと言われています。
経済に与えるプラスの影響
では、実際に2020年の東京オリンピックが日本経済にどのような影響をもたらすと考えられているのでしょうか。
まず考えられるのは、1964年の場合と同様に、インフラ整備工事による雇用の増大やお金の流れの活発化による経済の活性化です。現在、国土交通省は東京オリンピックに向けて空港にアクセスする鉄道の整備、東京3環状道路(圏央道、東京外郭環状自動車道、中央環状)の整備、環状2号線の整備、湾岸の再開発、バリアフリー化を進めています。
また東京オリンピック後も、東京の開発は進んでいきます。渋谷・中野の再開発や、山手線には「高輪ゲートウェイ」駅、日比谷線には「虎ノ門ヒルズ」駅が誕生します。虎ノ門ヒルズと六本木ヒルズの間には、大阪の「あべのハルカス」を超える日本一の超高層ビルができる予定です。このような整備事業は雇用誘発や経済の活性化に大きな効果をを与えると言えます。
東京都のオリンピック・パラリンピック準備局が2017年に発表した数字によると、オリンピック後の経済効果として、招致が始まった2013年からオリンピック終了後10年後の2030年まで、東京で20兆円、日本全国で約32兆円もの経済効果が見込まれると試算しており、また雇用誘発数は東京で約130万人、全国で190万人以上と見込んでいるようです。
過去の他オリンピック開催国のGDPデータから、今回の東京オリピック開催後は「日本は大きな経済成長は見込めない」という専門家もいますが、果たしてどうでしょうか?
前回の東京オリンピック(1964年開催)のときの日本のような新興国で経済規模が小さい国の場合、オリンピックによる経済効果は多大なものがあった、と考えれば、現在、先進国・経済大国となった日本がそこまで大きな経済成長がみられないと考えるのは分からなくはありません。しかしながら今の東京を見れば、全く成長効果が見込めないとは言い難く、東京を中心に日本の経済成長率は、底堅く推移していくのではないでしょうか?
地価上昇?東京オリンピックは不動産投資の追い風に?
不動産投資の観点から今回の東京オリンピックを見てみるとどのような分析が可能でしょうか。
オリンピック開催が最も大きく、直接的に不動産投資に及ぼすと考えられる影響は地価と価格の変動です。ここでは、主にオリンピック開催による地価の上昇について考察していきます。
地価が上がると想定されるエリアは?
地価上昇の傾向は、競技が実施される都心部、特に東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県で強くみられると予測できます。
要因としては
- 競技場やインフラ整備による物理的な土地の減少
- 観光客の増加による店舗・ホテル需要の高まり、再開発事業による投資需要の拡大
- オリンピック開催に伴う交通網整備による土地の価値の上昇
などが挙げられます。
実際に東京都では、2020年の東京オリンピック開催が決定した翌年の平成26年度から地価上昇率がプラスに転じ、その後も地価上昇率は年々上昇し、平成29年度には、東京都区部の地価上昇率は住宅地で+3.0%、商業地で+5.5%、全用途で+4.0%を記録しました。
しかし不動産投資の場合、地価が上昇し不動産価格が上がっても家賃は直ぐに引き上げづらいため、その分投資額に対する利益率(利回り)が悪くなってしまいます。と考えれば、地価が上昇する前に不動産を購入した方がいいというのも考えられますし、すでに物件を所有している方は、売却時の転売価格が高く見込めるということも挙げられます。
しかし前述の通り、東京オリンピックに向けて主に道路などの交通網の整備も行われていて、今後、東京はますます住みやすい街になっていくことが予想されます。そうなってくると、都市競争力は高まり、国内外から人が集まり、今後さらに東京への人口流入は加速していくと思われます。このようなことを総合的に考えると、東京都内の賃貸需要は徐々に高まっていき、賃料相場の上昇も考えられるのではないでしょうか。
まとめ
東京オリンピック開催に伴い、日本経済の成長については様々な意見がありますが、2008年に起きたリーマンショックの影響やサブプライムローンを発端とした世界的金融危機など経験した心理が一部、影響しているかもしれないですね。不安材料も経済成長のカギとなる要素も様々ですが、オリンピック後も様々な建設投資が大会後に継続されていく計画となっていることから、オリンピック後の日本経済に大きな反動はなさそうだと言えるのではないでしょうか。東京オリンピック・パラリンピック開催まであと数か月。大会の盛り上がりはもちろん、オリンピック効果で経済が活性化することも期待したいですね。